遂に行ってきましたよ。文楽。人形浄瑠璃ですね。
2年半前、慌ただしく東京から大阪に引っ越した際に、いくつかあった心残りの中に、「一回くらい歌舞伎観とけば良かったな」というのがありました。「逆に大阪には文楽があるよな。いっぺん観とこう」と漠然と思っておりました。
更に浄瑠璃を扱った第161回直木賞受賞作の『渦 妹背山女庭訓』を2年前に読み、更にいっぺん観に行こうという思いを強くしておりました。
それからはや2年…。時々国立文楽劇場のサイトはチェックしていたんです。でも、毎月必ず公演しているわけではない、若手の企画じゃないものを折角だから観たい、名前だけでも知ってる演目にしたい、会員登録しないとチケット買えないのめんどくさい…
とサイトを見たり見なかったりしているうちに歳月が経ってしまいました。
そして昨年末、久しぶりにサイトをチェックしますと、「義経千本桜」とあるじゃないですか。まさに「名前くらいは知ってる」演目。会員登録し、チケットポチりました。A席は5,500円、B席は3,500円。B席にしました。大きく分けて劇場の前半分がA、後ろ半分がBといったところ。Bの真ん中のエリアの前の方はけっこう埋まってました。
その後、先週か、再びサイトをチェックしたら、4月に「妹背山女庭訓」を1部と2部、「曾根崎心中」を3部でやるというではありませんか!!!!
しもた~、拙速だったか…と落胆。でもこれで合わなかったらもう行かないわけだし露払い?筆おろし?にはいいかと自分を納得さす。
そんなこんなで公開当日。公演時間14時の1時間前に行って、発券機で発券しに行きます。
思ったよりも大きい。そしてGoogleマップで示されたなんば駅からの徒歩、意外に遠い。
無事に発券でき、一度館を離れて13時40分頃再入館すると入場待ちで列が。年配の方多かったものの、意外と若い方もちらほら。和服姿の若めの女性の集団も。何かのサークルですかね。
13時45分開場。文楽劇場は2階です。730席くらいのキャパで、1/3くらいの入りですかね。
音声ガイドレンタル800円。小冊子付1,100円を申し込みました。小冊子は何のことはない、『耳で観る』なる季刊誌で機関誌みたいなものでした。
浄瑠璃用の人形。1mくらいありますかな。
演目と同時に作られるという展示用人形。動かないので小さく作られるということで、3回りくらい小さい印象。そしてこっちの方が古く感じる。メンテしたり部品・衣装作り直したりしないからだろうね。
意外と広い舞台。人形劇でこの高さいるのだろうか…
着席してイヤホンガイドをつけるとまもなく開演。幕間もガイドの方がずっと話していた模様。録音ではなく、リアルタイムの模様。贅沢。
写真を撮れるのはここまで。『妹背山~』で読んで字幕が出るというのは知っていたのだがどこに出るのだろうと訝しんでいたのですが、舞台の上、5mくらいのところに太夫が謡う口上の文言が表示され、イヤホンガイドが話の背景や人形のしぐさ、口上の意味などを解説。目が、耳が忙しい(笑)
もっと近い席で人形の表情とかを観たい気がするが全体が把握できないだろうなぁ。難しいジレンマ。
さてさて内容は「義経千本桜」5部からなる作品(通しでやると丸一日レベルらしい)のうちの3部。それが3段(幕)に編成されている。落ち延びた平維盛を追って妻内侍、子六代、家来の小金吾。追いかける源氏勢の話なんだけど、早い段階で遣い手や黒子の存在が気にならなくなる。1段目から人形の動きに魅了される。「いがみの権太」の動きが特に。風呂敷から行李を出し、ひっくり返して振る仕草とか、「おう、斬れるもんなら斬ってみな」と開き直ってどっかり座る仕草など実に活き活きとしてる。
段の最中に太夫と三味線が交代(ターンテーブルみたいなので回転・裏側に次のコンビが侍ってる)するのも面白かった。そのつなぎのことも、なんか名称を解説していたんだが、忘れた(思い出した。「送り」だ。
2段目の「小金吾討死の段」では、切り結ぶ小金吾に魅了。歌舞伎でもある一本の刀に相手数名の刀が集中、みたいなのはお約束としても(笑)、竹藪の中から一本切り取る→先の方を切り捨てて竹槍に(夜、刀だと光って感づかれるから)→竹槍で刺される小金吾、刀で竹槍を切り落とす、なんて演出はすごいなと感心しました。
多数の敵と切り結んで満身創痍の小金吾、総髪になるあたりも迫力がありましたね。
小金吾は「後から追いつく」と言い張って内侍親子を先に行かせ、遂に力尽きるわけですが、そこに村の5人組が通りかかるシーンがありますが、小金吾以外の死体全部片づけているけど、本当は複数名の死体が転がっているだろうよと気になったところ。
2段目終了で15分休憩。ここでガイドも交代。3段目は「すしやの段」。ドリフ、よしもと新喜劇等でもおなじみの、店内を横から観る舞台装置。そうか~。浄瑠璃(おそらく歌舞伎も)からある構図なのだね。舞台向かって左側に玄関があることまで継承されてる。逆の向かって右側が玄関という舞台もあるのだろうか?
序盤ちょっと動きが少なくてやや眠気が(疲れたのかもしれない)。
すしやの店主は先代・平重盛の恩を子・維盛に返そうとかくまっていたのだが、身分を下男にやつした維盛と娘・里の祝言をあげようとしたり、そこに逃げ延びた内侍・六代母子が訪れたり、里の愁嘆場があったり、源氏勢の梶原景時が検分にきたりとかなりこんがらがってくるのだが、終盤すしやの不肖の息子・いがみの権太の隠れた親孝行、勘当した店主が孫のあたりをつけようとしていたことなどが分かり泣ける。
ここまで来るとかなり見入ってしまうけど、店主夫婦、兄妹と4人くらいの登場人物が近くに配されると気にならなくなっていた遣い手と黒子も密集してさすがに気になりますな。3人/体×4体で12人が一画に集うのでね。
舞台は言ってみればカウンターのようになっていて、カウンターの上で人形が動き、後ろを人間が移動しているわけですが、その床を踏み鳴らして迫力を出したり、三味線を短い”リフ”みたいにして緊張感を出したり、色々な演出があるのですねぇ。何の演目かわかりませんが、普通の娘の顔が般若(鬼?)みたいになるやつありますよね。ああいう進化も浄瑠璃の歴史なのでしょうなぁ。
終演で館を出たら17時。思ったより面白かった。3時間も観ていたとは思えなかった。「曽根崎心中」か「妹背山女庭訓」も観に行こうかな。イヤホンガイドがなくてもそこそこ楽しめる、ない方が楽しめる部分もある、と思いながら、やっぱりまたレンタルするのかな…
さらに劇場のチラシには「大人のための文楽教室」とあり、6月開催。「仮名手本忠臣蔵」だって。完全に教科書の世界じゃない!これも押さえるべきか…。また沼化始まった?あなおそろし。