水曜日は仕事を早めに終えて、レイトショーで「TAR/ター」鑑賞しました。アカデミー賞にも6部門ですか、ノミネートされた作品で、クラシックの知識がほとんどないのですがケイト・ブランシェットの演技も気になって。心理劇要素も強そうだったので。
主人公リディア・ターはベルリン・フィルハーモニーの首席指揮者でジュリアード音楽院にもクラスを持ち、近日著作が発表され、マーラーの交響曲5番の録音を控えている(録音したらマーラー全作品をボックスで発売)。まさに順風満帆のキャリアだったが、女性音楽家の活躍を支援するプログラムでかかわったクリスタが自殺・リディアを告発するところから歯車が狂っていく…
ということでネタバレ含みます。
ターはレズビアンで公言してるしフィルのバイオリン演者と結婚し、養子も得ているが、出張などでは若い女性アシスタントを連れて行っている。そのことで楽団員からえこひいきの陰口をたたかれている。ん~、アシスタント男性にしたらいいんじゃね?とも思う。
カラヤンやフルトヴェングラー、バーンスタインの名前がランチで大御所から出てくる。男性指揮者に醜聞があったことにサラッと触れている。女性の権力を持った人のセクハラ・パワハラ問題は新しい問題、ということなのだろうか…。映画界でも#Me Tooで大御所が退場しましたが音楽界はどうなんだろう。
ターは演者の才能からその人が好きになるタイプらしく(このあたりは隙があるというか、コワモテだけど愛嬌のある?ところ)まだ仮入団のチェリスト・オルガが気に入って、演奏曲が順当にいけば楽団の第1チェリスト的ポジションの人がソロをやるはずが、オルガを据えたいがためにオーディションを開催したりする。
副指揮者を交代させることになり、アシスタントをしていたフランチェスカは起用されなかったことを機にリディアの元を突如去る。関係があったのかなかったのかはハッキリとはしないが、仮にストレートで、キャリアのためにとターと寝てたら「やってられない」となるわな…
結局カリスタの告発を機に楽団が(おそらく)リスク管理の一環としてターを首席指揮者から外すのだが、コンサート当日・舞台の上でバッチリ正装したターが代役の指揮者を突き飛ばしたり蹴ったりして外に連れ出され退団。家族(嫁さんと養子)も失い、アメリカのエージェント(男性)と組んで再起を図る。
東南アジア(タイ?ベトナム?)の公演に赴き、リハで「作曲者の意図は…」とやる。当日、「観客がコスプレしてるぞ?」と思ったらモンスターハンターオーケストラらしい。そんなイベントがあるんだね。
劇団あるあるなんだろうか。口吻に上る噂話を結晶化したような話なのかも。
出張先で送られた本のトビラを破いて捨てたり、その刻印の入ったメトロノームが夜鳴っていたり子供の作りかけの粘土もその文様だったり、スコアがなくなったりしていたのでストーカー的な人物の関わるサイコ・スリラーな展開になったりするのかな、と思ったけど全然伏線回収されなかった(笑)。タフな姿勢を貫いていても、精神的には追い詰められていった様を描いていたのかもしれないし、実は嫁さんがやっていたのかもしれない。
オケとのリハは英語とドイツ語のちゃんぽん。どちらかのネイティブじゃないと辛そうだ。そしてケイト・ブランシェット出身はイギリスだったはずだがドイツ語も堪能でらっしゃるのかね。
3回くらいターがジョギングするシーンが映るのだけれど、どうもフォームが…。なんか違和感のあるフォーム。走ってない人感が。走っている最中も悲鳴が聞こえるシーンがあるので、ターの心理状態を示す重要な要素なのかもしれないけれど引っかかりました。不眠、幻聴(ジョギング中、古いアパートでの声)のシーンを思うと、やはり少しずつ変調をきたしていたということなのかな。
全く説明がなかったけど、アメリカにある家がターの実家で、途中で現れた男性はきょうだい、いとこといったところなのだろうか。
色々説明を省いた、余白の多い(解釈の余地の多い)作品だった。ケイト・ブランシェット怪演。真下からあおりで撮った指揮のシーンは迫力ありましたね。公式HPのトップにGOODエンドかBADエンドかの投票ボタンがありました。そうか解釈が分かれるのですね。オイラは(一応)再生の話とみました。8.0/10。TOHOシネマズ梅田にて。
※ター、リディア、ケイトとバラバラだったのを統一しました
値上がりが続いていますが、auマンデイ、シネマイレージデー、TOHOウェンズディと、TOHOでは月~水割引を利用できる状態です。大阪に(というか都会に)いるうちは活用していきたいですね。
シャマランの新作は気づいたら終わってた(笑)シャマラン作品、着々とマイナー扱いですね。早く観ないとなのだね。文楽マンスリーだったので無理でした。金銭的に。
次は、「怪物」を観ようか観まいか思案中。