なんてことのない日々

つれづれなるままに、思ったことを書きましょうかね。凝った構成はやりません。インデックスとか。そんな時間はかけたくないので。ほぼプレーンテキストでやっとります。肩のこらない書き方をしている結果、肩のこらない読み物になってるかな。あまり強く批判めいたことは書いてないつもりですが、好きなモノ・コト・人を悪く言ってたらゴメンナサイ。個人の感想です。読み飛ばしてください。

【映画】「関心領域」鑑賞

 先週金曜日の日経夕刊の映画評欄をチェックするまで、正直知らなかった作品だった。あの「PERFECT DAYS」を押しのけてアカデミー賞の国際長編映画賞を獲ったんだとか。ちょっと興味が出て、観に行きました。水曜日、1,300円で観られる設定にて。

 例によってネタバレ含みます。

 舞台はアウシュヴィッツ収容所。に隣接する敷地の、所長ルドルフ・ヘス一家の家。「社宅」といっていいのかな。「3年前は何もなかった」という敷地には(小さいけど)プールがあり、温室があり、植栽(花き)があり、菜園がある。使用人も4,5人おり、戦時下、首都圏で生活していたら望めないゴージャスな生活を営んでいる。隣がアウシュヴィッツであることを除けば。

 そのアウシュヴィッツで起きていることに対して、住人は(ほとんど)無関心だ。看守の怒鳴り声、打擲音、銃声。まるで聞こえていないとでもいうかのように。

 唯一(?)リンゴの取り合いで収容者同士が揉めたことを看守が問いただす様が塀の向こうから聞こえてきた時、一人で子供部屋で遊んでいた次男坊が「次からはやるなよ」的な独り言を言う。それくらいだ。

 ヘスの妻・ヘートヴィヒに至っては夫の転属を知って怒り、ここを離れたくないから別離は辛いが夫に1人で行ってほしいという(そして受け入れられるんだ)

 ヘートヴィヒのこだわりが詰まった庭園で繰り広げられる華やかな催し、隔てる無骨なコンクリート塀、その奥の暗い収容所の雰囲気を一面に収める構成力。説得力ある。

 そして時々煙突から吹き上がる煙。川で子供たちを遊ばれていると、川の流れを見て急遽引き上げるヘス。子供たちを風呂場で洗う母と使用人。そんな環境なのにここが快適とはね…。

 序盤にもグロテスクなシーンはあって、収容されたユダヤ人からとり上げた衣服を分け合うところ。ワンピースを数着、使用人に分け与えるところまでは(まあ)いいが、ヘートヴィヒは毛皮のコートを得、個室で試着。ポケットに入っていた口紅もひいて発色を確かめる。これから死にゆく顔も知らない者の所有していたものを我が物にするその心理的抵抗の低さがおぞましい。
 ママ友(?)とのランチ会でも歯磨き粉に隠されたダイヤの指輪の話など隠し場所の情報交換とは。もう同じ「ヒト」と見なしていない。軍人の家族とは言え、ナチスの思想・世界観が浸透している様がうかがえる。
 明るいヘスの庭園で子供たちの集まる催しが行われている最中、煙が右から左へ移動してくる。パッとはわからなかったけど、機関車の煙ですね。ユダヤ人を乗せた。もちろん住民たちは一顧だにしない。

 唯一良識というかまともな反応を示したのはヘートヴィヒの母。ヘス邸を訪れてすぐは住宅や庭園、食事と絶賛していたが、やがて不穏な雰囲気を感じ、夜間の夜泣き、収容所の物音、煙等を見て娘に何も言わずに去っていく。自分の「城」を否定されたヘートヴィヒは不機嫌になり八つ当たり。

 ヘスは転属先でもいかんなく「才能」「管理能力」を発揮。後任は落第の評、ホロコーストを控え、アウシュヴィッツへの復帰が決まる…

 ナチスのパーティの会場、いつもあんな感じのところだったのかな?「イングロリアス・バスターズ」のクライマックスの会場もあんな作りだったような…

 最後の、現代のアウシュヴィッツ記念館のおびただしい数の(収容者の)靴の展示がすごかった。この存在に”無関心”でいられるとは…。

 「ルドルフ・ヘスアウシュヴィッツの所長?」って思ったのですが、有名な方のルドルフ・ヘスは1世代?上ですね。本作のヘスはルドルフ・フェルナンド・ヘスで、「ヘス」の綴りにも違いがあるみたいです。島田と嶋田みたいなもんですかね?(←違う)。どちらもSSの中佐を経ているのでより紛らわしいです。
 アウシュヴィッツを取り囲む一画を「関心領域」と称したそうな。中は関心の対象外?内?どういうニュアンスなのだろう。

 「これを観ている現代の我々もまた…」的な没個性的な視点は割愛します。ただただ、説明を省いた映像の説得力がすごい。

 ところどころ挿入される暗視カメラによる、収容者へ差し入れをする女性のシーンも別の緊迫感がありましたね。

 図らずも、またA24作品を観てしまった。またすごいものを観た。これもまた観たい。
大阪ステーションシネマにて。9.0/10

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