なんてことのない日々

つれづれなるままに、思ったことを書きましょうかね。凝った構成はやりません。インデックスとか。そんな時間はかけたくないので。ほぼプレーンテキストでやっとります。肩のこらない書き方をしている結果、肩のこらない読み物になってるかな。あまり強く批判めいたことは書いてないつもりですが、好きなモノ・コト・人を悪く言ってたらゴメンナサイ。個人の感想です。読み飛ばしてください。

【イベント】国立文楽劇場で「妹背山女庭訓」鑑賞(その2)

 2代目吉田玉男さんも人間国宝に認定されたとのこと、おめでとうございます。その吉田さんが遣う演目は第3部の「西遊記」でしたが、22日、「夏休み記念公演」の初日に行ってまいりました、「妹背山女庭訓」。

 4月の通し公演の続きです。ラスボスの「蘇我入鹿、誅殺の段」が含まれているので大団円とばかり思ってたのですが、5段目まであるそうですね(今回は4段)。ええ…終わらないんだ。そして4段だけで4時間弱…。色々誤算が。

 まあ気を取り直して、開演前で30分あり、展示コーナーで心を整えます。

舞台のセットの1/30の模型

太夫・三味線の回り舞台と上部の御簾のところの模型です。

おお~。元祖「妹背山女庭訓」の読み本!

第3幕の特徴的なセットの版画。18世紀とほぼ同じ舞台セットを21世紀に観てるんだなぁ、と思うと感慨深いです。

人形の図説。こんなのも出てたんですね。

「大人のための文楽教室」では遠くで見てたむき出しの人形を間近で。

顔の裏側。まぶたとかが接続されてますね。

腕や脚の部品もよく見えます。腿は接続されてないけど膝はしっかり固定されてるんですねぇ。

曽根崎心中」のセットの1/35模型。「これも観たなぁ」と思うと感慨もひとしお。

 そんな感じで眺めていたら開場のアナウンス。いつも通りイヤホンガイドを借りて入場。

 第4幕は奈良の造り酒屋が舞台。暑い中ご近所の店子たち総出で1年に1度の井戸の入れ替えをした後の打ち上げ。もろ肌脱ぎの大きめの人形4体が動き回って踊ったりして壮観。

 井戸替えに参加しなかった新入りの烏帽子屋・求馬(実は鎌足の息子)とひと揉め

 その後酒屋の娘、お三輪と求馬ととある女中(実は蘇我入鹿の妹・橘姫)の三角関係

 橘姫の正体を探るべく、求馬が七夕の苧環(おだまき)の糸を橘姫の振袖にゆわえ、求馬と女中の関係を探ろうとお三輪がもう1つの苧環の糸を求馬にゆわえ…

と、ややこしい展開。ちょっと動きが少ないシーンだったのと、木曜日の夜勤の回復が思いのほかままならなかったのもあってちょっとウトウトしていました…

 苧環を手繰った求馬はうすうす感じていた橘姫の正体が判明し、敵と付き合うわけにはいかないから別れる、入鹿が奪った十束の宝剣を奪えば夫婦に、と選択を突きつけ(国と)求馬を取ることとする橘姫。

 途中で糸が切れたものの求馬を追って御殿までたどり着いたお三輪。今晩求馬・橘姫の内々の祝言があると聞きパニック。橘姫の侍女たちに見つかり散々にいびられ、嫉妬に狂い髪を振り乱して構内をすすむお三輪に気づく鎌足の家来。入鹿の魔力を弱める「着執の相の女の生き血」をゲットするべく脇差で一突き。ヒドイ…

 いみじくも皇位を奪った人物が住む館にあっさり町娘が進入してしまうなんてセキュリティが甘すぎるし(入鹿は魔力を持っているからか?)、お三輪を刺した後弔おうとした家来と衛兵との立ち回りもあっさりしすぎな感あり。

 そもそも寝ている間に…とかならまだしも、相対している人の服に苧環の糸結びつけて気づかれないか?しかもお三輪のは橘姫にそれをやった求馬に対してだからね。

 先日見た1~3段から様々な犠牲を払い、入鹿の魔力を無効化して、遂に入鹿の首を切り落とす鎌足。首だけになっても飛んだりするが最終的には入鹿討伐。橘姫は入鹿から一太刀浴びせられてたがどうなったのだろう。十握の宝剣だったので殺傷力があるのか疑問だけど。

 色々な伏線を回収するのが5段目なんだろうか。そして、ここまで上演してしまって、5段目上演あるのだろうか。「女庭訓」とは婦女子の心構えみたいな本で、「人の男に関心を示さない」もそこに含まれているので、お三輪が橘姫に対して「『女庭訓』(の内容)を知らんのかぁ」みたいな毒づきがありましたな。

 江戸時代のお芝居は時代考証というようなものはなく、飛鳥時代を描いても風習も登場人物の考え方も江戸時代当代のもの、という緩さが面白いですね。大義のためなら家臣はもちろんのこと、市井の者の犠牲も厭わない感じ、封建制ならではと思いました。

悲劇の主人公、お三輪さん。終盤打ち掛け姿にかんざしもなにもかもなくなって髪を振り乱す姿は人形なのに情念がすごかったです。桐竹勘十郎さん、すごいです。

 13時30分開演、幕間に1度休憩があって、終了が17時20分。3時間半くらい、ですかね…。「妹背山女庭訓」終わると思ってたのにな…。

 これで文楽は当面見納めにしようと思ってたのですが、11月に近松門左衛門300年法要記念公演「冥途の飛脚」があるそうで…どうしよっかな。まあまあハマってますね(笑)。話自体への言及はほとんどないんですが、観劇のきっかけになった直木賞受賞作『渦~妹背山女庭訓』を再読しようかな、という気持ちが日に日に強くなっています。

【追記】

今まで気づきませんでしたが、会場においてあるスタンプ、これって毎回公演ごとに木彫りしてるってこと?